多くのスーパーギタリストに愛された
超弩級ギタリスト、
ロイ・ブキャナンの代表作
『ライヴ・ストック』

『Live Stock』(’75)/Roy Buchanan

『Live Stock』(’75)/Roy Buchanan

70年代からロックを聴いていてギターが好きなリスナーなら、ロイ・ブキャナンの名前は1度は耳にしたことがあると思う。当時の大物ギタリストのインタビューなどでも彼の名前は登場するし、日本盤もリリースされていたので、彼に興味を持っていた人は少なくなかっただろう。ただ、彼のアルバムにはギター中心のインストが多いせいか、はたまたカントリー、ブルース、ロック、ジャズまでジャンルを問わないからか、一般のロックファンが注目することはあまりなかった。しかし、彼の多彩なギターワークによってロックギター全体の技術がレベルアップしたことは間違いない。今回紹介する『ライヴ・ストック』は彼の初のライヴ作品で、スタジオ盤のクールさとはまた違って、魂のこもった熱いプレイが繰り広げられている。

熱いロックと冷めたイージーリスニング

エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、スティーブ・ハウ(イエス)、ゲイリー・ムーア、デビッド・ギルモア(ピンク・フロイド)ら、ロック界を代表する多くのアーティストに影響を与えたギタリストがロイ・ブキャナンだ。トーンやボリュームノブを巧みに操り、ピックと指弾きを交えることで彼のギターの音色は曲中で自在に変化した。また、驚異の握力(たぶん)で複数弦のベンディングを軽々こなすなど、時にはギミック的な奏法も使いながら、多くのギタープレーヤーを魅了した。しかし、熱心なリスナーは別にして、彼の名前が一般的にあまり知られることがなかったのは、彼の音楽の中心がギターのみであったからだ。

通常、グループの場合、それぞれの楽器の担当者はメンバー間のアンサンブルを重視する。それはギターであってもベースであってもドラム、キーボードでも同じである。歌を中心にしたオリジナル楽曲をどう伴奏するかに重きが置かれることが多い。歌がメインに据えられるという意味では、ブルースでもR&Bでもカントリーでも同じである。そのため、各楽器のプレーヤーは、ソロの時を除いて自分のプレイのみが目立つ行為はしない。各楽器は歌と歌のイメージを生かすために、ある時は前に出たり、ある時は後ろに引いたりするのである。

ところがロイ・ブキャナンの音楽は、歌があってもなくても必ずギターがメインである。オリジナル曲であってもカバーであっても、あくまでも彼のギター演奏が主となる。彼のギターが歌手であり、伴奏者でもあるというスタイルなので、彼以外の演奏者は目立たず黒子として存在する。それだけに、ギターを弾く人には注目されてもそれ以外の人にとってはあまり関心が持てない音楽だと言えるだろう。だからこそ、彼の名前が一般的にあまり知られていないのだ。もちろん、こういったインスト音楽は昔から少なくない。しかし、その多くがイージーリスニング的な演奏で、ロックファンにとってはあまり興味が持てる内容ではない。イージーリスニング作の多くが空間の雰囲気作りの役割を持っているので、その性質上あまり熱くなってはいけない。それがイージーリスニングやBGMのあるべき姿なのである。

ミュージシャンズミュージシャン
としての存在

ロイのように、ロック、ブルース、カントリーなどを中心に、多彩なテクニックを熱いスピリットで演奏するプレーヤーは、本来はインスト音楽には向かない。彼のようなアーティストは歌をメインにした音楽をやるべきだと思うのだが、ロイはギターで表現したいことが多すぎたがゆえに、彼以外の演奏者は目立たず(それはヴォーカリストであっても)、彼のギターを支えることに徹している。そのさじ加減でイージーリスニングのようにも、ロックのようにも聴こえるのだ。そういう意味では彼の音楽は中途半端かもしれないのだが、彼の音楽を極めるためには仕方のない選択であったのだと思う。

しかし、ロック界で活躍する優秀なギタリストの多くが、一般のリスナーは気づかないロイの飛び抜けたギターテクニックを見逃さなかった。ジェフ・ベックにせよ、スティーブ・ハウにせよ、自分の音楽やギターワークを高めるために、ロイの技術を学び習得しようとした。これが、ミュージシャンズミュージシャンと呼ばれたロイの立ち位置なのである。

OKMusic編集部

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